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あしたのジョー心理学概論~矢吹 丈 その心の病~ PART26

2022年01月24日

「愛の不在」が危険行動に走らせた。

 

ジョーは、なぜ、危険を回避する行動をとらずに、

死と背中合わせの危険行動を求め続けたのか?

 

これについては2つ考えられる

・死に対する異常な恐怖を制御する反動形成

・不満足な状態からの死による脱却

以上の2つである。

 

ジョーの場合は、上記2つとも該当するように思われる。

 

なぜなら、

ジョーは、幼児期に親の強烈な「対象喪失」を体験し、

その結果引き起こされた自分の現状を容認できないでいる。と、

考えられるからである。

 

対象喪失とは、

かけがえのないものを失うこと。それをどう体験するかが、

メンタルヘルスにとっては重要である。

愛情や依存対象の喪失(肉親との死別離別失恋子離れ、ペットの死等)、

慣れ親しんだ環境の喪失(引っ越し、転校、卒業、転勤等)、

身体の一部の喪失(手術や事故等)、

目標や自己イメージ、所有物の喪失など、

あらゆる事柄が含まれる。

 

ジョーの危険行為をはじめとする社会的不適応行動は、

アメリカの社会学者、クーリーが述べる

「幼児期における第一次集団との関係」を正常に結べなかったことに原因がある。

 

第一次集団とは

家族など親密な協力関係にある集団のこと。

 

幼児期における第一次集団は、個人の社会化、人格形成に

大きな影響を与えるからである。

 

個人が一つの社会集団に属する為には、

自分を取り巻く環境(人間、社会、文化など)との接触を通して、

集団が共有している行動様式や価値観などを

取り込まなくてはならない。

この社会化や人格形成の過程に大きな影響を及ぼす人間こそ、

「親」である。

親は子との良好な関係を保ちながら統制と支配で子に接する。

ジョーは、

親の愛情を知らず、愛情飢餓感から憎しみさえ抱きながら育った。

 

「拒否された子供たち」

ジョーは幼少期から過した施設では、落ち着くことなく脱走を繰り返している。

これは、親(特に母親)から強制的に引き離された「対象喪失」

経験をもつジョー自身にも原因はあるが、

施設における養育者の拒否的な態度が、ジョーの反抗的で攻撃的な

行動をとらせたとも推測できる。

 

ドイツの精神分析学者のアドラーは、

「拒否された子供は、自分に対し、この世は敵意あるもの、

  自分を無視するものと体験し、人々は自分に逆らっており、

 信頼できないものと信じ込むようになる。

 その結果、いつも裏切られることを警戒し、欲しいもののためには

  戦わなければならないといった態度を形成していく」 と、述べる。

また、

「この時期に植え付けられた人間に対する不信感が、

 将来にわたって、その子供の人間関係を貧困にする」とも考えた。

 

ジョーは、ホスピタリズムの犠牲者と言えるもの知れない。


ホスピタリズムとは、

乳幼児期に、

何らかの事情により長期に渡って親から離され施設に入所した場合に

でてくる情緒的な障害や身体的な発育の遅れなどを総称する言葉である。

 「施設病」「施設症」と言うこともある。

 

少年院の仲間に「このチビ」と呼ばれたジョーの身体の発達の遅れや

飽きやすい性格、衝動的な行動などは、まさにホスピタリズムの

特徴を表している。

 

アメリカの心理学者、エリクソンは、

「人間的刺激に欠けた子は、対人関係が表面的で人を真から

 愛することもできないし、その愛を感じることもできない」 と、述べる。

 

ジョーは幼児期に親を失うという傷を心に負い、

  母性的養育も十分に受けてなかった。 

それ故、

自己防衛のために警戒心を異常に高くし、

  外部からの働きかけを拒絶せざるをえず、

 他人との友好的な接触が保てない人間に作りあげられたのであろう。”

 

また、エリクソンは、

「信頼の発達は自律性の成長に必要である」とも述べている。

 

幼児期の成長過程において愛の欠如による不信で始まったジョーは、

正常な社会的関心の発達が妨げられる要素が強すぎた。

このため、自らの行動をコントロールすることを学習出来なかった。

と、判断してもいいのではないだろうか?

 

 

 

 

本日も、ありがとうございました。

 

 

心を和らげる相談室 HEART    代表   杉野 茂広


 

 

 

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