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あしたのジョー心理学概論~矢吹 丈 その心の病~ PART25

2022年01月23日

構成主義者=ジョー

学習者を横から支援する段平の教育法

 

構成主義(こうせいしゅぎ)は、

学習者たちがある対象について、彼ら自身によるそれぞれ違った理解を

組み立てるようなかたちで教育すべきである、

あるいは学習者たちの中に既に存在している概念を前提に

授業を組み立てる必要がある。

 

ジョーの世界観は極めて構成主義的であった。

自分の見方、自分の価値観、自分の人生観を貫くことが、

生きる証であった。

このような生き方は、ジョーの成長に従って先鋭化されてくる。

ジョーに対して、どのような「教育的手段」が、ジョーを変容させる力を

もちえたであろうか?

 

ジョーにとっては、何か教えられる「事実」が存在するということ

そのものが、ジョーの存在を脅かすことであった。

 

そこで、段平がとった唯一の方法は、

構成主義的な教育観を用いたアプローチであった。

言い換えれば、

ジョーの性格が段平に構成主義的手法をとらせたことになる。

 

構成主義に基づくと、教師は学習者が知識を構築するための

援助者であるということになる。

学習がうまく進むように援助したり、環境を整えたりする。

いわば、マネージャーの役割を担うことになるのである。

 

優れたプレイヤーほど「モデリング」効果は高い

 

モデリング

自分にとって有意味な他者がとる行動を観察して、

その行動を獲得したり、

それに対して抑制的な影響を受けたりする現象のこと。

 

 

ジョーは、例えばカーロス・リベラの試合をTVで観戦しただけで、

そのレベルを判断し、高等テクニックな反則までも判断できる点から、

ジョーがモデリングをした時の効果は非情に高いと推測される。

 

図が描かれていない通信教育

 

具体的に段平のコーチングはどの様な物かは、察する方も多いと思う。

最も理論的な指導が見られるのが、

ただ、文字だけが書いてあるだけの

ハガキ 「あしたのために」 である。

段平は、「あしたのために」のハガキを鑑別所のジョーに送り付ける。

段平は、ジョーのボクシングにおける技能や知識のレベルを

かなり正確に把握しており、パンチの凄さは十分承知していた。

しかし、同時にジョーのパンチは常にストレートでしかない事も

見抜いており、パンチのコンビネーションなどという考え方は、

かけらも持っていないということも見抜いていた。

 

そのジョーに対して、先ず段平が与えたコーチングは、

ジャブの打ち方とその目的を教えることであった。

 

このように、

段平が送った「あしたのために」は1枚につき1課題で、

段階的に技術やその意味を教えていくものである。

 

スポーツの教本などで、図解が入っていないものは考えられないが、

段平の通信教育には一切、図が入っていない。

これが意図的になされたのであれば、

”文面から技術をイメージとして構成することをジョーに強いるという狙い”が

考えられる。

 

 

「もうひとつのモデリング」

それは、殴られたら、殴り返すようなジョーの性格では、

防御技術を習得させることが極めて困難であると思った段平がとった

行動である。

 

そこで段平が取った行動は「青びょうたん」と、

あだ名される青山に対して、

徹底的にパンチから逃れる方法を教え込み、

ジョーの目の前で青山が勝ち進むことを見せる事、

そして、ジョーと実際に対戦させることであった。

 

 

ばったりとジョーのコーチをしなくなる段平。

 

一方、青山に対しては、まさしく手取り足取りコーチする。

この時の青山に対するコーチングとジョーに対するコーチングの

対比は極端である。

 

 

素直に、教えられることを次々と吸収していく青山に対して段平は、

つきっきりで指導するのだが、

ジョーに対しては通信教育のみであった。

 

そんな中、少年院でのボクシング大会が開催される。

 

青山は、コーチングのかいあって第7寮代表の座を勝ち取る。

 

そして、寮の対抗戦でも対戦相手のパンチを

フットワーク、カバーリング、スウェーを駆使して全てをかわし、

第3ラウンドでKO勝ちする。

 

次に、青山とジョーの対戦になる。

 

この試合では、いきなり青山は打っては逃げる。

「ヒット・アンド・アウェイ」と言う戦法を用いる。

ジョーの油断をついて左ジャブ、右ストレート、左ボディ、右ダブルフックと

連続的に打ってくる。

 

そして、ジョーがむきになって内にいくと逃げるのである。

 

第2ラウンドに入っても、この展開に変化はなく、

ジョーはダウンさせられる。

 

しかし、ジョーは、ダウン後、

見よう見まねでカバーリングやフットワークを使い始め

青山との試合中にすっかりマスターしてしまう。

 

ジョーは青山をモデルとし、自分の行動様式にそれを取り入れようと

したのである

 

正に、段平は、青山をジョーに対するモデルとしてコーチしたのであった。

そしてジョーは青山のふりを見て防御技術を習得してしまう。

 

 

ところで、

 

段平のコーチングは、成功したと言えるのであろうか?

 

最終的にはホセ・メンドーサと世界バンタム級タイトルマッチをやるまで、

ジョーを育てたという視点から見れば大成功であろう。

 

しかし、

ジョーの闘い方が、結局変わらなかったのも事実である。

ジョーは青山を相手に覚えた防御の技術を持ちながら、

プロの世界に入ってからも、終始、「肉を切らせて骨を断つ」という

スタイルの戦法をとり続けた。

この点では段平のコーチングは段平も平凡なコーチに終わったと言える。”

 

結局、段平はジョーの性格までは変えることは出来なかったのである。

 

学習者の個性や主体性を尊重する構成主義的教育の思わぬ落とし穴が、

ここにあるのかもしれない。

 

 

 

今回は長くなりましたが、最後までありがとうございました。

 

 

心を和らげる相談室 HEART  代表  杉野 茂広


 

 

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