あしたのジョー心理学概論～矢吹　丈　その心の病～　PART19 | 三重県でアルコール依存症をはじめとした悩み相談を受け付けております

原因の推測と理解（２）

 

自分の行動についての原因帰属は「自己知覚」と呼ぶ。

 

原因帰属の過程で用いられる帰属の枠組みには

どのようなものがあるのか。

 

一般的には２つの重点がある。

・行動の原因に重点を置くもの

・行動の意図を重視するもの

 

 

まず、行動の原因に重点を置いた帰属の枠組みとしては

「内的―外的」の区別と「安定―変動」の区別があり

この二つが組み合わされて、ひとつの整った枠組みが出来上がる。

（上記の図、参照）

 

「内的」とは、推測する者が対象となる行動の原因をその

                    「行為者自身」にあると考える場合である。

 

「外的」とは、それが行為者を取り巻く

                    「状況」にあると考える場合である。

 

デビュー戦（対　村瀬武夫）で、相手に打たれ過ぎたのを段平に

詰め寄られるシーンがある。

その時のジョーの言い分は以下である。

 

”「しょっぱなからクロスを決めちゃあ、相手も気の毒じゃねぇか、

倒される前にちっとは打たせてやらねぇとよ」”

と、ジョーが発言したのは

「自身」への「内的」帰属である。

 

世界タイトルマッチ（対　ホセ・メンドーサ）直前、パンチドランカー症状による

ミット打ちの失敗を段平に指摘されそうになって、

「薄暗い場所で新聞を眺めていたせいか、目が・・・」　と、誤魔化したのは

「状況」への「外的」帰属である。

 

「安定―変動」の区別は、帰属される原因の時間的な変わりやすさで判断する。

「安定」：固定的で変化しにくいもの

「変動」：時間的に変化しやすいもの

 

原島　龍　戦　・　南郷　浩二　戦でのジョーの嘔吐の原因は、

力石を殺してしまったことの「後遺症」と考えられるが、

これは、

ジョー自身に変化しにくい原因があると考える「内的安定」帰属である。

仮に、このことが「単に体調不良」と片付けられていたとしたら、

それは、ジョー自身にある変化しやすい原因への「内的変動」帰属と言える。

 

ジョーは、プロテストに合格した際には、

「拳闘だけが、俺を合格させてくれた」と言って喜んでいる。

 

これは、拳闘と言う

「課題特性」への「外的安定」帰属である。

 

新人王決定戦の控室で、ウルフ金串の足を引っかけ転倒させた時には、

「この人、自分で転んでおきながら、俺が蹴とばしたと言って怒っているんです」

と、とぼけて見せる。

これは、「偶然」へ「外的変動」帰属した言い訳と言える。

 

今までは、行動に重点を置いてきたが、ここからは意図を重視してみよう。

 

意図を重視する帰属枠組みには「内生的―外生的」の区別がある。

この区別は、

”行動そのものが目的であったのか、それとも、その行動が何らかの

目的の手段であったのかで判断される”

 

つまり、

「内生的」：行動そのものが目的

「外生的」：行動が何らの目的達成の手段である。

 

 

ジョーは段平のライセンスを復活させる為の手段として、

バンタム級新人王のウルフ金串に喧嘩を仕掛け、

控室でクロスカウンターを決めた。

これは意図的には「外生的」と言える。

 

これに対して、プロ６回戦でのウルフとのクロスカウンターは

それ、自体を成功させることが目的であった。

意図的には「内生的」である。

 

なぜ、

クロスカウンターを打ち込みウルフを叩きのめす必要があったのか？

を考えてみれば容易に検討が付く。

 

段平のライセンス復活はプロになった以上、必要不可欠である、

しかし、

今まで書き込んできたジョーの性格をもう一度振り返ってもらいたい。

「利己的」と言う事を忘れていませんか？

 

これこそ、矢吹　丈。

 

 

ライセンス交付も狙っていたが、

同時にウルフを叩きのめす事によって、

新人王が控室で、ポッと出のボクサーに叩きのめされた事は

マスコミも黙っていない。

そしてウルフ金串のプライド、名声をボロボロにして、

 

リングの上でカタを付けると言う形で正式にウルフから指名を

受け対決の道を切り開いた訳です。

 

要するに、

リング上で正式に対戦するには丹下拳闘クラブの

ライセンス認証が不可欠、

併せて、自分の対戦相に新人王のウルフに目を付けて

わざわざ、喧嘩を売りに行き叩きのめす、

控室での事はすべて

ジョーの計画通りに運び正式な試合が認められ、

ジョーの思惑通りに事が運んだことになります。

 

 

今回は、この辺で。

ありがとうございました。

フォローしてくれている方々、重ねてお礼申し上げます。

ありがとうございます。

これからも、よろしくお願いします。

 

 

心を和らげる相談室　HEART　　代表　　杉野　茂広