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あしたのジョー心理学概論~矢吹 丈 その心の病~ PART16

2022年01月10日

“過保護”から判断ミスが続いた「国際時代」

 

カーロス・リベラ(世界バンタム級第6位)との出会いをきっかけに

テンプル恐怖症を克服し、東洋バンタム級チャンピオン奪取、防衛、

そして世界タイトルマッチへと進む。

この時期を「国際時代」とする。

 

この時期段平の自我構造は、大きな発展をとげる。

「親」の自我状態についてみると、

「国内時代」の傾向がより顕著になり、「養育的な親」が異常に高くなる。

 

今回も段平が主軸となることを御理解ください。

 

この時期、カーロス戦をはじめ、

金龍飛戦といった世界へ飛躍するための試合を短期間でこなしているが、

段平は相手の力に恐れをなして避けようとしている。

 

 

過保護な「養育的な親」がかえって子供の足を引っ張っている状況である。

加えて言うなら、段平の「養育的な親」は子供の言いなりなる

過保護ママ”だった為に、

ホセ・メンドーサ戦を棄権出来なかった点にもある。

 

これが以前の段平のように独善的な「批判的な親」が健在であれば、

試合の途中でタオルを投げ、ジョーを救えたのである。

 

段平の「大人」の自我状態は、トレーナーとしては全く無能になった。

 

実際、ジョーの作戦は殆ど段平の指示に逆らうものであったが、

それが成功している。

対カーロス戦、対ホセ戦では、とうとうジョーに

「話しかけないでくれ」とはっきりセコンド失格を言い渡されている

 

また、

1ラウンドKO勝ちに終わった東洋バンタム級第5位、

ウスマン・ソムキット戦直前には、タイ式ボクシング出身と知って

過剰に動揺している様が描かれ、

更に、

苦戦したハリマオ戦では、

 

ジョーの序盤の猛攻で楽勝と判断してしまうなど

相手選手の力量に関する鑑識眼も鈍っている。

 

”特に致命的なのは、

ジョーのパンチ・ドランカー症状に気付きながら、

簡単な自己流のテストをクリアしただけで

大丈夫と判断してしまったことにある。”

 

 

意外なことに、この時期に「大人」の自我状態をフルに機能させ、

ジョーのトレーナー役を陰で見事に果たしたのは「白木 葉子」であった。

 

ここで触れておかなければならない言葉がある。

海外選手との試合の調整でジョーは段平に、

あっつぁんが、海外の選手に渡りがきくほど優秀なトレーナーとは思えねぇ”

と、言われており、葉子の存在が裏にある事をジョーは見切っていた。

 

この時期、段平が内面に不快矛盾を抱えていたことを示唆している。

ジョーは、より強い相手を求めて頂点を目指す。

段平は葉子の力を借り、ジョーの周辺業務をサポートしようとする

「大人」+「順応した子供」と、

破滅へと進んで行くジョーを保護し、できればボクシングから遠ざけたいとする

「養育的な親」との相克である。

 

このような事態は、恐らく次のようなプロセスによって発生したと考えられる。

 

いよいよ、まとめである。

 

少年院時代にはジョーを指導するうえで機能したトレーナーとしての「大人」と

「批判的な親」が、ジョーの才能の開花によって用済みとなり、

「大人」の心的エネルギーは、「自由な子供」へ

「批判的な親」の心的エネルギーは、「養育的な親」へと移行し始めた。

 

だが、国内時代には嫌でも対戦スケジュールの調整や種々の

社会的マネジメントをしなければならず、この経験の蓄積によって、

本来、柔軟性に富む段平の「大人」がマネージャーとして機能するように

準備が整えられた。

 

そして、

「国際時代」に入り機能再開された「大人」によって「順応した子供」で

あることが世界戦を御膳立て(葉子の援助も含む)するうえで有利であると

判断されたのであると考える。

ところが、同時に成長していた「養育的な親」がジョーの破滅への衝動を感じ取り、

ボクサーとしての上昇志向を阻むような言動をすることも多くなった。

 

つまり、

ジョーの軌跡が、表面的には”あした”という理想を実現しようとするものでありながら

裏では破滅への衝動の成長過程を示すのに対応して、

段平の自我構造の問題も膨らんでいったと考えられる。

 

ここまで、交流分析で書き込んできましたが、

次回からは「帰属的理論」の方面から

掘り下げてみたいと思っています。

 

交流分析、沢山の方々に見て頂けて感謝しております。

 

ありがとうございました。

 

心を和らげる相談室 HEART   代表  杉野 茂広

 

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