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あしたのジョー心理学概論~矢吹 丈 その心の病~ PART5

2021年12月12日

心の中に「優しさ」と「残酷さ」が共存

 

矢吹 丈は純真で素直で優しい面を持っており、子供達にも「ジョー兄ぃ」と慕われていた。

この一面からは、衝動性や残酷性、暴力性を持っているとは想像さえつかない。

 

しかし、心理の現実に関わった事のある人であればジョーの性格も青年期の典型的な問題症例にすぎないことは解かりきったことだろう。

 

境界性パーソナリティー障害には、一見矛盾する人格が流動的に交代して表れ、それが周囲を振り回す原因となる。

ジョーも子供達に優しいばかりでなく、子供達を利用して金儲けをしようとしたり、ひどい暴力を振るったりもしている。

これは、依存と攻撃のパターンが交代で表れるほんの一例に過ぎないのである。

どちらが本当の姿というわけでもない・・これこそが本来の人間という種である。

どちらも本当の人間、矢吹 丈であって病的なのは、その矛盾する二つの側面が全く統合されることなく一個人に存在し、しかも、全くその矛盾を自覚、反省出来ない点にある。

 

何か内的世界の分裂症が表れているのである。

 

分裂症

統一されているはずの精神活動が統一を失いバラバラになる状態。

精神分裂症の精神状態は分裂状態にあるといわれる。

 

 

暴力性、衝動性に繋がる「闘争本能」がジョーをボクシングに駆り立てた。

 

他のスポーツに比べて人間の闘争本能や攻撃衝動の出現を求める部分が大きいボクシングと言うスポーツではあるが、ジョーが試合の時に見せる「攻撃性」は普通ではない。

そもそも、ボクシングの防御方法の基本であるガードや技巧性が極端に欠けている部分が見受けられる。だからこそ「喧嘩屋 ジョー」のレッテルが貼られたのではないのではなかろうか?

 

事実、原作においてもジョーは「追い詰められれば追い詰められる程、ジョー本来の闘争本能や攻撃性があらわになり、それが最後には相手を圧倒する」という形をとるが、対戦相手を心から憎んでいる訳ではない。

 

寧ろ、ジョーにとっては強い対戦相手、事故の攻撃衝動を十分に発揮できる敵が必要であった。

 

強烈な攻撃衝動と自己破壊衝動を持ったジョーが内的不安定性、そして不安、恐怖感、満たされない思いを克服するにはどうしてもそれが必要であったと考えられる。

つまりは、ジョーが十分に依存出来る他者とは「強い敵」なのである。

その相手に対しては十分な依存と攻撃を発揮でき、内的世界の安定が得られるからである。

 

この様に

境界性パーソナリティー障害は、対象に対しての依存と攻撃を繰り返すパターンを示す。

それが、ジョーの場合は対戦相手という形で表れるのであろう。

その中の一人に、「無冠の帝王」の異名を持つ「カーロス・リベラ」の存在はジョーがテンプルを打てるようになるには十分で重要な対戦相手であった。

ジョーの中では、力石の再来とも言えるであろうが、今回はカーロスに触れずにいきます。

 

しかし、「金 竜飛」戦では、青年期に現れる身体症状の成長期にあたり、試合前の初の減量を強いられる。

 

減量が上手く行かず、段平も試合をさせるまいと階級をフェザー級にするように勧めるが、ジョーは頑なに拒否、ジョーはバンダム級に拘り続ける。

 

 

その拘りには理由があった。

 

自分の力でバンタム級リミットまで体重を落とそうとするが、それにも限界がある。

 

公園でジョーを探していた段平と出くわすが、やはり段平は「なにもボクシングを辞めろと言ってるんじゃねぇ、バンタムからフェザーへ移るだけだ、それで全て上手く行くんだ。な、丈」と説得するが。

 

ここでジョーの本音が聞けるのである。

 

第20話「俺のバンタム・・・減量への挑戦」での名セリフである。


「バンタムつうのはなぁ、ウルフが居て、カーロスが居て、ホセが居る、そして力石が居たところなんだよ、しかも力石はこの俺と闘うために二階級もの体重差がありながら命をかけて減量し、そして降りて来てくれたクラスなんだよ。 俺は、俺はなぁ、おっつぁん。そんなかけがいのねぇ俺のバンタムを捨てる訳には・・捨てる訳にはいかねぇんだよ!」

 

と、素直な気持ちと今までの対戦相手に対する敬意が伺える。

 

段平が、ジムの計量計の重りに細工をし、土壇場の計量日には計量失敗で諦めさせようと画策するが、計量を一発パス出来る体重まで落とせたことを喜んでいたジョーにとっては段平の行為は裏切り行為に値する。

 

最終計量時間まで残り少ない中、ジョーはバンタム級リミットをパスするには910g体重を落とさない限り試合は出来ない。

 

この怒りの矛先はやはり段平に向いた!が、そんな時間的猶予のない中で910gの減量方法など皆無である。

 

ここでも、焦りと衝動性が生じ、何とか試合に出る為に、下剤を服用しサウナに入り倒れてしまう。

最終的には血まで抜くという非常識で自己破壊的な行動に出る程である。

 

結果的には、最終計量時間ギリギリで間に合い「東洋太平洋チャンピオンの金 竜飛」との試合は可能になったが、初めての減量と減量ミスが災いし、試合前のジョーはすっかり気落ちしていた。

 

計量後は、体重増加は認められているので「レストランで食事中に対戦相手の金が、減量をミスしたジョーに向かい身の上話を始める」

金は、朝鮮戦争で幼い時期に「腹を空かせる毎日が続いた日がと語り始める・・・」

内容は、「兵隊が一人倒れていたので亡くなっていると思った金は、食料を頂戴しようとしたところ兵隊は死んでいると思い込んでいた金に向かって腕を掴んできた際、石で殴り殺した、でも、その兵隊こそが、金の父親だったと」

 

そのせいで、食べるという意欲が無くなり胃袋が小さくなり減量とは無縁である事を誇らしげに言う。

そして、「減量なんて腹一杯食って胃袋を広げてしまった奴の贅沢さ」減量ミスをするボクサーはボクサー失格とまで言い、ボクシングも自分にとってはママゴトとさえ言い放つ。

対するジョーには「勝てる気がしない」とまで思わせる程の精神的ダメージを植え付けるのであった

 

実は金も、「過去の生い立ちから、極度の小食。また、そのトラウマが原因で極度の強迫観念(強迫性障害)を患い、夜中、手に血の付いた幻影からを洗い続ける癖とを見ると錯乱するPTSDを発症している。

・試合をした後は夜通し手を洗う奇行も見せる。

・本人には、手に血がついているように見えているそう。

これらは、玄 大佐(トレーナー)も認めており、ジョーがリング上で血を流したことからPTSDを発症しフラッシュバックを起こし恐怖心が芽生え、あっさり負けてしまう。

 

 

強迫性障害

自分でもつまらないことだとわかっていても、そのことが頭から離れず、わかっていながら何度も同じ確認などを繰り返すなど、日常生活にも影響が出てきます。 意志に反して頭に浮かんでしまって払いのけられない考えを強迫観念、ある行為をしないでいられないことを強迫行為といいます。

 

PTSD

死の危険に直面した後、その体験の記憶が自分の意志とは関係なくフラッシュバックのように思い出されたり、悪夢に見たりすることが続き、不安や緊張が高まったり、辛さのあまり現実感がなくなったりする状態です。

 

 

 

今回は相当、長文になってしまいましたが、ここで終わりにさせて頂きます。

最後まで、お読み頂きありがとうございました。

 

明日から、より一層冷え込みが厳しくなるようです、コロナの新しい株も発生しております、

皆様、温かくしてお過ごしください。 

では、失礼します。

 

 

    心を和らげる相談室 HEART      代表  杉野 茂広


 


 


 

 

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